M-1グランプリ2022

M-1グランプリ2022】(約6200字)

公開 2023年3月30日

 

 

 

毎度お馴染みM-1記事!

 

もう3月です。遅っ。
遅すぎて
M-1のMってMarchのMでしたっけ?」
みたいな声も聞こえてきそうです。

 

 実は賞レースについて書くのが、キングオブコントをすっ飛ばした影響で実質1年ぶりになっている。
 それに加えて、観てからかなり時間が経って記事を書き始めているため(一応観た直後に自分の採点だけはメモした)、そのときの感覚と今とではどうしても微妙にズレがある気がして、なんか自分でもよく分からない感じになっている。書きたさより面倒臭さが勝つ。やはりこういうのは観てすぐに書いていかないとダメだね。
 ちなみに、すっ飛ばしたキングオブコントに関しては、観れたらすぐ書きます。さすがにそろそろ観るようにします。

 

 

 この記事の性質上、どうしても上から目線のようなコメントが多くなってしまう。ただ、漫才をはじめとした演芸は観客がいて初めて成立するものであり、観客側の意見というのも重要なものである。観る側が正直な感想を伝え、演者側がそれを取り入れたり取り入れなかったりすることで発展していくものだと思っている。
 もちろん、「ここ凄いね~」「さすが芸人だね~」みたいな良いことだけを言ってひたすら褒め称える記事を書くことだってできるし、現にそういうのもある。でもそんなもの読みたいですか?何の議論も生まずどこにも波風が立たない文章なんてくそつまらんでしょう?
 芸人が真剣にM-1に挑んでいるように、観ている側も真剣に書いているからこそ、時には上からの物言いのようになってしまうし、それはある意味仕方のないことである。バカにするとか、見下すとか、そのような意図は一切無いのだということは理解していただきたい。

 

 

ちなみに、今大会は初めて全員知っている顔ぶれ(全員のネタを一度でも見たことがある)になりました。

 

 

 

 


まずはいつも通り敗者復活の話から。


〈主観たっぷりのランク分け〉

A(良い。決勝進出レベル)
オズワルド


B(悪くはない。敗者復活上位レベル)
からし蓮根・令和ロマン・ヤーレンズマユリカ


C(普通。敗者復活中位レベル)
シンクロニシティTHIS IS パン
ストレッチーズ・ビスケットブラザーズ
ダンビラムーチョ・ケビンス・ミキ


D(良くはない。敗者復活下位レベル)
ママタルト・カゲヤマ・ななまがり・
ハイツ友の会


E(悪い。準々決勝レベル)
かもめんたる


F(ダメ。出直してこいレベル)

 

Z(論外。話にならないレベル)

 

◎敗者復活総評
 勝ち上がったのは予想通りオズワルド。敗者復活メンバーの中では実力も知名度もトップクラスであり、人気投票になってしまうことを加味しても、勝ち上がりはまあ妥当かなと思う。
 2位の令和ロマンは初めて観たが、かなり出来がいい。霜降り明星真空ジェシカのような大喜利系漫才で、ツカミは一番良かったかな。からし蓮根は高いレベルで安定しているし、マユリカもかなり安定感が増している。アキレス腱のくだりは一番笑った。
 今年の"私が気になった枠"はシンクロニシティ。制約の多いネタでうまく笑いを取っていた。

 

 

 

↓ここからほんぺん🐧

 

 

 

 


カベポスター「大声大会」 91
ネタ中にトップバッターを連呼するという、トップバッターのトップバッターによる非常にトップバッターらしい漫才(は?)。言葉選びを基にしたオーソドックスな掛け合いの展開はよく練られており、声もいいので心地よさも感じる。しかし、やはりどうしても爆発力には欠けるところがあり、優勝を狙うとか上位を目指すとか(決勝に残っている時点でかなり上位ではあるのだが)、そういうタイプのネタではないように思う。

 

真空ジェシカ「シルバー人材センター」 92
センス溢れる言葉の大喜利漫才。2年目になって分かってきたが、真空ジェシカは2人のやり取りの中でダジャレ的なパワーワードを生み出すことが多く、その生成能力が大きな武器となっている。ギリギリ知っている絶妙なラインを突くのもうまく、それらのセンスは私も高く評価している。今年は話の流れがスムーズで、昨年指摘したようなぶつ切り感は減った。だが、ボケの質は全体を通して去年の方が上だったような気がする。そのぶん差し引き0で去年と同じ点数となった。

 

オズワルド「明晰夢」 90
微妙な変化はあったが、基本的には敗者復活と同じネタ。オズワルドがM-1決勝の場で披露するネタは5本目となり、パターンも知られてきているため、よほど爆発的に面白いものでないと優勝は難しくなってくる。通称"和牛ルート"に突入である(ただ、私の中では和牛は2回優勝している)。比較されるのは周りとではなく過去の自分たちになってくるので、過去のネタを超えられないと上位に進出するのはなかなか厳しいだろう。最近サイコ要素強めのネタが増えてきたのが気になる点ではある。

 

ロングコートダディ「マラソン」 93
縦に展開するというのは珍しく、全体的に動きを多用した漫才になっているのもコント師らしい。青春とか大奥とかの色々な捻りを加えた後に、単に"太ってる人"というのは秀逸。これは去年も言ったのだが、私は漫才においては必要以上にうろちょろしてほしくないという考えがある。それだけを理由に減点はしないが、動き回るとか足音を鳴らすとかのじたばたする系があまり好きではない、ということは一応書き記しておく。

 

さや香「免許返納」 94
去年の敗者復活でのからあげを見て、まさか1年後に私が本戦で94をつけることになるとは全く想像していなかった。前回とは別人のような出来で、2人の熱量もさることながら、ボケとツッコミが自然に入れ替わる構成は緻密で非常によく練られており、完成度がかなり高い。ボケに対するツッコミがまたボケになり、さらにそれにツッコミを入れるとそのワードが再び次のボケになることで笑いが増幅するのである。さや香史上最高ネタであることは言うまでもなく、今大会の中でも一番のネタであることは間違いない。私にLINE上で絡んできたさや香ファンの人も草場の陰で喜んでいることだろう。勝手に殺すな。

 

男性ブランコ「音符運び」 90
どういう題材やねん。空想の職業であることに加え、見ている側の想像力と理解力に委ねられるので、一歩間違えればうまく伝わらない可能性もあったネタだが、ポイントごとにしっかりと爆発して笑いを取れるのは流石である。ただ、笑いの種類の少なさゆえにネタが単調になってしまったのは勿体ない。"運ぶのに失敗して相方が負傷してあたふたする"のみだったため、何か別の種類の笑いがあれば完成度は大きく変わったはずである。

 

ダイヤモンド「レトロニム」 85
終始盛り上がらず。言ってしまえば単語の羅列なので、ワードを圧倒的に面白くするか、トーンにメリハリをつけるか、などで変化をつけないと、説得力0のジョブズで終わってしまう。もねってやめてよ!というくだりもよく分からない。どの会場でもどの層の客にもハマらないと思う。「もね」は大して不快なポイントではないし、どう考えてもツッコむべきなのはネタ全体に対してだろう。今回のネタのタイトルをつけるのに悩み、ダイヤモンドの公式YouTubeチャンネルを探したところ、このタイトルだった。新しく登場した物事と区別するために、以前の物事に改めて付けられた新しい名前のことをレトロニムと呼ぶらしい。ひとつ賢くなったよ。

 

ヨネダ2000「イギリスで餅つき」 88
独特すぎる。なかなか大真面目に話すのも難しいのだが、一言で言えば余計な箇所が多い。笑いに繋がっていないやり取りもいくつかあり、ボケの質・量ともにもっと詰められるはず。テンポを一定に保つ必要があるため、動きが終わるたびに餅つき(の捏ねる側)に戻るので、畳みかけられないという欠点もある。恐らく万人受けを想定しているタイプではないとは思うが、まだ2年目なんだし、ランジャタイのように手遅れになる前に、多くの人に受け入れられるようなスタイルを目指してもいい気もする。せっかく2年で自分たちの形を作って決勝に進出するだけの実力があるのだから、あえて選択肢を狭めてしまうのはまだ早く、勿体ない。今のスタイルを突き進むのは、もう少し回り道してからでも遅くはないだろう。

 

キュウ「全然違うもの」 87
毎回ネタ選び失敗するよね。別にそこまでキュウに詳しいわけではないが、優勝はさすがに厳しくても90超えレベルのネタはあると思うのだが…。言葉遊び系のゆったりとしたネタが多く、間をうまく使って自分たちの空気に持って行くタイプなので、M-1で持ち味を出すのは難しいでしょう!このネタももっといろいろな展開が考えられるのにあっさり終わったのはダメでしょう!結成"9"年の"キュウ"が"9"番目に登場した段階で、9位になるのは必然だったのかもしれない。

 

ウエストランド「あるなしクイズ」 92
前回遠慮したぶん好き勝手やってきたな。前回は前半に刺さる言葉が少なかったことで自分たちの空気にするまでが長くなってしまったが、今回はその反省を活かして序盤からかなり飛ばしていた。毒舌ネタは共感できるかどうかで人によってだいぶ評価が変わり、完璧ではない人がやるからこそ笑いに繋げることができるものである。もしも毒を吐く側が容姿端麗頭脳明晰なら、的を射た発言でも逆に反感を買う可能性がある。その点井口の場合は、悪口を言ったところで、小男が何か言ってるな~ぐらいにしかならないので、これはキャラとしてかなり強い。

 

 

 

 


【審査員採点】
       山 大 塙 富 志 礼 松      私
カベポスター  84 94 92 93 89 92 90   634   91
真空ジェシカ  95 92 92 92 94 94 88   647   92
オズワルド   87 93 90 90 95 92 92   639   90
ロングコートダディ  94 92 94 96 96 95 93   660   93
さや香     92 96 95 97 95 97 95   667   94
男性ブランコ  86 91 92 95 94 96 96   650   90
ダイヤモンド  86 90 88 88 88 89 87   616   85
ヨネダ2000  91 91 96 91 97 90 91   647   88
キュウ     87 90 88 90 89 90 86   620   87
ウエストランド    91 93 93 94 98 96 94   659   92

最高点     95 96 96 97 98 97 96    94
最低点     84 90 88 88 88 89 86    85

 

 今回はオール巨人上沼恵美子が審査員を引退し、新たに山田邦子と博多大吉が加わった。といっても、大吉は以前に審査員をやっていたので、本当に新しいのは山田のみである。
 その山田だが、カベポスター84からの真空ジェシカ95はちょっと荒れた。客観的に見た場合、この2組に11点分の差があるとは思えないし、その後も84点を下回るコンビがいなかったことから、視聴者に「カベポスターと真空ジェシカ以降とで審査基準を変えたのでは?」という疑問を抱かせる結果となった。
 これは至って真っ当な指摘で、私もそのときは「ん?」と思ったが、基準を変えたともとれるし、山田邦子の中の最低と最高が連続で来ただけと考えることもできる。審査の基準を明かしていない以上は、それを変えたかどうかは本人にしか分からないというのが正直なところだ。終わってみれば全体としてそこまで変な採点ではなかったのが何よりの救いである。ただカベポスター84はちょっと可哀想かな。全組見た後の山田なら88ぐらいはつけそう。

 いくつか見かけたのが、「山田邦子の点数を抜いても順位は一緒!だから問題ない!」みたいな見当外れな擁護。ここでの論点は審査基準を途中で変えたのではないかということであり、低い点をつけたこと自体には何ら問題はない。審査員として一番大切なのは高い点数をつけることではなく、"最初から最後まで自分の審査基準を守ること"である。そもそも点数を抜いても順位が変わらないのなら「じゃあ山田邦子は何のためにいるの?そんないてもいなくても同じみたいな人審査員として必要なの?」という結論になってしまう。

 分かりましたかヘンテコな擁護をしているお子様脳みその皆さん?大事なのは点数どうこうではなく審査基準を最後まで守ることです。


ではご一緒に、

だいじなのは、しんさきじゅんを、
さいごまで、まもること、

はいよくできました。


あとは相変わらず志らくの採点のクセが強い(志らくは(良い意味と悪い意味が2:8ぐらいで)感覚がおかしいので)ことと、大吉が正統派の漫才に高得点をつけているのはオール巨人の意志を継いでなのか?と思ったこと以外特に言うことはないです。

 

 

 

 


いや、登場前の煽りVTRの曲は戻ったのに2本目の登場曲は変わるんかい!!!
あの

てーてーてっ、てっ、てー
    てっ、てっ、てーてー!

みたいなやつ!
肘カイカイじゃない方のやつ!
(伝わります?)

 

 

 

ウエストランド「あるなしクイズ」 92
引き続き悪口満載の悪口漫才師。展開や流れは先程と同じ。優勝を決めた瞬間があるとすれば「M-1にあってR-1にないものは夢」のところだな。

 

ロングコートダディ「タイムスリップ」 89
システムは去年の肉うどんと一緒。1本目と比べると笑いどころも少なく、「団子を食べている江戸っ子かと思ったら鳥貴族」「遠山の金さんかと思ったらワクチン接種」ときて、「江戸の町かと思ったら映画村」というのは意外性がないように感じた。

 

さや香「男女の友情」 91
熱い掛け合いの中で正しいことを言っている方が途中で交代する構成。1本目と比べると多少クオリティーは落ちたものの、巷で言われているような、"スベった"扱いされるようなネタではない。

 

 

 

 


【最終審査結果】
山田大吉塙富澤志らく礼二松本
 ウ さ ウ ウ ウ ウ ウ
 エ や エ エ エ エ エ
 ス 香 ス ス ス ス ス
 ト   ト ト ト ト ト
 ラ   ラ ラ ラ ラ ラ
 ン   ン ン ン ン ン
 ド   ド ド ド ド ド


 優勝はウエストランドでした。
 私が選ぶなら2本の合計でさや香なんだけど2本目だけで評価するならウエストランドもあり得るか…?この2組で割れるかな?と思っていたが、意外にもほぼウエストランドに票が入った。
 ウエストランドにとってはネタを連続でできたことが何よりの追い風になっただろう。4分×2で実質8分ネタのようになり、更なる毒を求めていた観客に間髪入れず再び毒を届けることができたことで、会場はかなりウエストランド推しの空気になっていたのではないかと推測できる。
 結果論になるが、さや香ロングコートダディは、どちらかが先に2本目を披露してウエストランドの空気を壊さなければならなかった。ただ、この2組の心情を考慮すると、あの場面であえてトップを選ぶという選択はさすがに出来ないよな。わざわざ「1番で行きま~す」なんて博打すぎるもん。
 ちなみに、これまでのM-1で、1本目を最後に、2本目を最初に披露したコンビがいるのか調べたところ、ぺこぱ(2018年)とNON STYLE (2009年)が該当した。

 

 

 

 


〈まとめ〉
おもしろかった。
(園児なの?)
(だいじなのは~の台詞の方ですか?)

 

 

 

↓2021

 

tarahukutabeo.hatenablog.com

 


↓2023
???