※広島カープの2018年日本シリーズ

【広島カープの2018年日本シリーズ

              (約6900字)
※過去記事

脱稿 2018年12月31日
公開 2022年9月7日

 

 

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※過去記事は、そのときの私の感想を残しておくために、あえて原文のまま(誤植があれば直しますが)掲載します。そのため、今となっては不自然な表現や記述がある可能性もございます。例えば「最近の~」や「数年前の~」といった表現が出てきた場合、それは現在ではなく、記事を書いた時点での“最近”や“数年前”を指しています。
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 2016年秋、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島東洋カープ日本シリーズで連勝スタートし、札幌に乗り込んだ。しかし、そこで短期決戦を熟知する日本ハムに押されて連敗。日本一はならなかった。その一年後、再びチャンスが訪れるもCSでDeNAにまさかの4連敗。またしても日本一とはならず。そして今年、2年ぶりに日本シリーズに進出。34年ぶりの日本一を目指した戦いが始まった。今年はセ・リーグもパ・リーグも超打高。なんだかんだで打てば勝てそうなので広島には有利。西武を倒して歓喜の瞬間へ…というのが当初の見立てだった。しかし対戦相手に決まったのはどこよりも日本シリーズを知り尽くしているソフトバンクだった。このときから運命の歯車は狂い出したのかもしれない。結局、広島は先勝するが4連敗というお決まりのパタ一ンで敗退。日本一はまたもお預けとなった。これは、その日本シリーズについてだらだらと書いた記事である。では覚えている範囲で書いていこうと思う。

 

 

 まず第1戦。広島は最高のスタートを切る。先発大瀬良が初回のソフトバンクの攻撃を3人で抑える完璧な立ち上がりを見せると、その裏に菊池のホームランで1点を先制。その後四球とヒットでチャンスを作ると松山がライトへタイムリーを放ち2点目。ソフトバンク相手に初回から2点を奪った。この調子で初戦突破といきたかったが現実はそう甘くない。広島打線はその後千賀に完璧に抑えられ、5回表に守備のミスから同点に追いつかれる。その後は両軍何度もチャンスを作ったが結局無得点。広島としては何としても取っておきたかった試合だった。逆にソフトバンクにとっては勝ちに等しい引き分けである。

 

 

 次に第2戦。この試合は終始広島のペースだったように思う。なかなかチャンスをものに出来ないソフトバンクに対して広島はチャンスで走者を返すことができた。とてもシンプルなことだが単純なことを確実にできたからこその勝利であった。勝ったから基本的に書くことはあまりない、というか出かけてて中盤から見てない。

 

 

 そして第3戦。序盤の攻防を見て乱打戦になると誰が予想しただろうか。敗北はしたものの、広島はこの試合脅威の追い上げを見せた。6点を追う8回、先頭の鈴木がこの日2本目のホームランを放つ。その後2本のヒットと四球で満塁とし、安部のこの日2本目のホームランで1点差まで追い上げる。そして9回にも二死一・三塁と一打同点のチャンスを作った。しかしこの場面は初球を打ってファーストゴロで試合終了。もしここがマツダスタジアムで相手がセ・リーグなら確実に逆転していたと思う。この試合の収穫を挙げるとすればソフトバンクに勝ちパターンの投手を使わせたことである。2年前の日本シリーズで広島は勝ちパターンの投手を5連投6連投させた結果、試合終盤に逆転されるという失態を犯している(まあ終盤まで同点もしくは1点差の試合ばかりだったのでしょうがないといえばしょうがない)。一時は6点差をつけておきながら最終的には守護神の森まで出す羽目になったソフトバンクと敗れたが中﨑とフランスアを温存できた広島。この両者の差が後々効いてくると思っていた。この時までは。しかしシーズン中から何度も小刻みに投げさせているソフトバンクにとってそれは大したことではなかったようだ。後で考えてみると、両チームの力の差は初戦を勝ちきれなかった広島と第3戦をなんとか勝ちきったソフトバンクという形で既に表れていたのだ。この試合で一つだけ言わせてもらうと高谷のホームランが一番意味が分からなかった。シーズンのホームラン1本のバッターに打たれてどうする。あれさえなければ勝っていたかもしれないのに……。

 

 

 さらに第4戦。広島は初回、菊池がレフトへヒットを放つと続く丸のセンターの頭上を超えるヒットで菊池が激走して本塁へ。普通なら先制点だ。しかしこのときのソフトバンクは凄かった。クッションボールを処理した柳田や、明石の中継プレーと送球、タッチした甲斐の動きには全く無駄がなく、菊池はタッチアウトになった。一瞬でもどこかがもたつけば失点は免れなかっただろう。それぐらい大きく、この試合の流れを決めてしまうようなプレーだった。あの当たりで本塁へ突入させるのは決して間違いではないので、広島を責めるよりも、ここぞというときに完璧な守備を見せたソフトバンクをここは褒めるべきだろう。これも後々分かってくることだが、今年の日本シリーズは守備が試合の流れを決めたように思う。そして広島は守備でミスを犯す。2点を追う6回、広島は一死一・三塁のピンチを招き、代打長谷川にセンター前へ抜けるタイムリーを浴びる。ここで私が気になったのがこのときの田中と菊池の動きである。途中までは打球を追いかけているのだが、打球の手前でお互いに速度を緩め、半ばお見合いのような形になり、打球はセンター前へ抜けた。この打球を取れというのは難しいと思うのだが、タナキクのお見合いによって抜けたのではないかと思うと勿体ないように思えてならない。勿論記録上はヒットである。しかしそこには記録には残らないミスがあった。ただでさえ試合はソフトバンク優勢だったのにもかかわらず、広島のミスによって完全に流れは決まってしまった。流れを失った広島に3点差を追いつくことはできず敗戦。ちなみに、だいたいこの試合ぐらいからもう盗塁はしなくていいと思うようになってくる。

 

 

 続く第5戦。ここまでは先制点を取ったチームが最終的に勝っているので両者何としてでも先制点が欲しかった。広島はここで勝ったら本拠地に向けて弾みがつくし、ソフトバンクは勝つと王手をかけて敵地へ乗り込める。両チームとも絶対に落とせない一戦である。先制したのは広島だった。二死一・三塁から會澤がセンター前へタイムリーを放った。なおも二死一・二塁で追加点のチャンス。次打者の野間の当たりはライトへのヒット。誰もがこれで2点目だと思った。しかしソフトバンクは今回も全く無駄のない守備を見せて走者を本塁で刺し、これ以上の失点を防いだ。点を取ったのは広島だが流れを引き寄せたのはソフトバンクだった。4回に2-1と逆転され、このままズルズルいくかと思ったが5回にかすかな希望が見えた。広島は二死二塁のチャンスを作り、迎えるバッターは日本シリーズ打率1割の丸。ここでソフトバンクは千賀からモイネロに投手交代。丸は自分のスイングができていなかったうえにほぼ初見の左投手との対戦だったので、正直に言って私もあまり期待していなかった。しかし丸はモイネロの高めの速球を捉えてライトへの逆転2ランとした。この一発で流れは完全に広島のものとなり、今日は勝てるのではという希望が見えた。しかしその希望もわずか数分後には無くなる。広島は連打と送りバントで一死二・三塁のピンチを招き、大瀬良からヘルウェグにスイッチ。私はこの継投には嫌な予感しかしなかった。というのも、はっきり言ってヘルウェグより大瀬良の方が格段に信頼できるし、何より直前にソフトバンクが先発の千賀を下ろして継投に入った瞬間に広島が逆転しているからだ。予感は的中し、グラシアルにデッドボールを与え、柳田の投ゴロの間に同点とされてしまう。もし大瀬良が続投していれば、タイムリーを打たれた可能性は否定できないが、デッドボールを与えるようなことはなかっただろうし、柳田の投ゴロの処理にもたついて失点するようなこともなかっただろう。緒方監督が積極的になりすぎたがゆえの継投ミスだった。そして6回表、広島は會澤のソロホームランでまたもリードを奪う。これが試合を決めるホームラン……にはならなかった。7回裏、フランスアが明石にホームランを浴びて同点とされた。広島お決まりの「伏兵に一発を浴びる現象」である。誰も予想しなかったであろう展開で試合は終盤へ。9回表、10回表と広島はチャンスを作るも好守に阻まれるなどして無得点。一方ソフトバンクも9回に一打サヨナラの好機を迎えたがフランスアと中崎が踏ん張り試合を決めることはできなかった。そして運命の10回裏を迎える。先頭の柳田が2球目の甘い球を振り抜いた。完璧に捉えた打球はライトスタンドへ一直線。サヨナラホームランとなった。後で発覚したがこのとき柳田のバットは折れていたらしい。バットが折れるのは普通は打ち取ったときなのでこの場合は投手の勝ちであるが、バットを折られながら完璧にスタンドへ運んだ柳田は見事である。広島はこの打席まで柳田を完全に封じていたが、この場面でヒットを放ち、しかもそれがホームランというのはさすがというほかはない。(余談だが、日米野球第1戦で柳田は9回にサヨナラホームランを放っているが味方になった柳田はこんなにも心強いものかとそのとき思った、と同時に、この日本シリーズでのサヨナラホームランへの私の悔しさは諦めへと変わった) 結局広島は福岡で一つも勝てずに広島へ帰ることになった。1戦でも取っていれば結果は変わったかもしれない。第3戦と第5戦は勝ちきっておきたかったとつくづく思いながら過ごした私であった。

 

 

 後がない第6戦。本拠地へ帰ってきた。ここまで広島1勝のソフトバンク3勝で引き分けが1つ。第6戦~第8戦はマツダスタジアムで行われるため、1試合を単体で考えれば広島は有利。そのためには第6戦を勝利し、連敗の流れを止めたいところである。しかし先発ジョンソンが初回から少しミスもあり一死一・二塁のピンチを背負う。完全に1点は覚悟したがジョンソンは踏ん張り無得点。流れは広島に来ている。1回裏に先制できれば試合の主導権を握ることができる。しかしそううまくはいかないのが野球の世界である。先頭の田中がヒットで出塁し次打者の菊池は送りバントの構え。走者を得点圏に送ってクリーンアップへと繋ぐ場面であるが、シーズン犠打成功率100%の菊池が送りバントを失敗。雲行きが怪しくなった。続く丸の打席で田中が懲りずに盗塁を仕掛けると今回はついにセーフの判定。スタンドが湧いたがリクエストの結果アウトに。広島が流れをつかむことはできなかった。その後ソフトバンクは4回に1点を先制。5回にもグラシアルが見逃せばボールのような低めの球を打ってホームランにし1点を加えた。それに対して広島はバンデンハークの前に三振に次ぐ三振。完全に抑えられてしまう。途中からバンデンハークが156km/hとか157km/hとか出してきたのは笑った。先発の球速じゃない。あんな球打てるか。広島の次の抵抗は8回裏だろうか。代打の小窪が8球粘ってフォアボールをもぎ取る。ここで次打者は左の田中という場面だが、ソフトバンクは左の嘉弥真にスイッチ。外角低めに完璧に投げ込まれて田中は三振。ありゃ打てん。9回裏の広島最後の攻撃。何としてでもチャンスを作りたいところだが、菊池・丸があっけなく凡退。二死走者なしで鈴木を迎える。8球粘ったが最後はサードゴロに倒れた。広島の今シーズンは終わった。個人的には菊池と丸が出塁し繋いで1点返して一死満塁で新井がサヨナラ打かゲッツーという場面が見たかった(どうでもいい)。

 

 

 以上が振り返りである。
 

 

 


 ではここからは敗因を色々とまとめていこう。まずはソフトバンクの中継ぎ投手だ。日本シリーズ前までは広島と互角と思われていた(というか思ってた)のだが、様々な差があった。まず広島の中継ぎといえば中﨑・フランスア・一岡がメインで、それに次ぐのが今村・ジャクソン・ヘルウェグ(+アドゥワ・中田廉)といった感じである。一方ソフトバンクは岩嵜とサファテが不在だが森・加治屋・高橋礼・嘉弥真・モイネロ・武田と駒が揃う。ここで私が言いたいのはバリエーションである。もっと言えば投手のタイプの違いだ。森は速球とナックルカーブ持ちで加治屋はフォークを使い高橋や嘉弥真は変則ピッチャーと多彩なのだ。投手が降板しようものなら次は全く違うタイプが出てくる。さらに短期決戦で監督が工藤となれば、決め球を持ちそこそこの投球をする投手を惜しみなくつぎ込んでくるのだ。これがソフトバンクの投手を打てそうで打てない理由であるように思う。

 

 次は甲斐キャノンについて。6連続で盗塁を刺して一躍話題になったがはっきり言おう。半分は甲斐の実力だが半分はマグレと広島の戦略ミスによるものだ。それにはエンドランが関係している。広島の盗塁には明らかにアウトになるものがいくつかあった。それが恐らくこれだ。相手がセ・リーグなら成功したものもあっただろうが、相手が悪かった。ソフトバンクの投手相手だとまずバットに当たらないのだ。当然のことだが、エンドランはバットに当てなければただのランである。エンドランを狙った結果悉く三振ゲッツーになってしまったのだ。その一方でシンプルに刺された盗塁もある。甲斐の武器が強肩であることは言うまでもないが、それ以上の強みが送球の仕方とそのコントロールである。私も流石に甲斐の肩の強さは知っていたが、あれほどコントロールが良いとは思っていなかった。というかあのときの甲斐はゾーンにでも入っていたかのように神懸かっていた。絶対に二塁ベースの右側の低いところに投げ込み、左側に投げたり高めに投げたりしなかった。どのピッチャーよりもコントロールが良かった。(ちなみに他にゾーンに入っていたと思われる例にWBC準決勝での菊池のホームランがある)。一方広島についてだが、何故あそこまで盗塁にこだわったのか疑問だ。もう走るなと第3戦辺りから広島ファン全員が思った。走れば投手が走者に気を遣うし、投げミスも起こるかもしれないという広島首脳陣のコメントもあったが、投げミスに頼る盗塁なら尚更必要ない。一つ確認しておきたいのが、広島の武器は盗塁ではなく走塁だということだ。内野ゴロでも若手ベテラン外国人関係なく一塁へ全力で走る、ライト前ヒットで一塁走者が三塁を狙う、センター前ヒットで一塁から帰ってくる(野間に限るが)、などといった積極的な走塁のことである。広島は決して盗塁が上手いとは言えない(田中は盗塁は多いが失敗もそこそこ多く、野間は足の速さを盗塁に活かしきれていないなど)ので、ムキになって二塁めがけて特攻する必要はなかった。
 


 あと交流戦のときも思ったが、デスパイネに打たれ過ぎ。

 

 最後に(デスパイネのくだり終わりかよ)、広島野球ヘタ問題である。今回の日本シリーズは1勝4敗でソフトバンクに完敗した広島だが、データ上はそうでもない。

      広島 ソフトバンク
得点       20    23
安打       50    43
本塁打    8   7
チーム打率 .245 .215

上の表からも分かる通り、広島とソフトバンクの間に大きな差は無い。むしろ打ちあぐねていたのはソフトバンクの方だと見ることもできる。少ないチャンスをものにしたソフトバンクに対して、広島は決めきれなかった。ここにソフトバンクの野球の上手さ(巧さ)がある。

 

 

 では広島が日本シリーズを制して日本一になる方法はあるのだろうか。今後日本一になることはできるのだろうか。それは今年できなかった以上、同じく優勝できなかった和牛と一緒でかなり難しいと言える。日本ハムに呑み込まれた一昨年、主力3人を欠いた昨年とは違い、今年の広島は全てにおいてベストメンバーだった。来年からは嫌でも弱体化が進み、たとえ4連覇を達成してもその状態で日本一になれる可能性は低い。一方パ・リーグも今年は圧倒的な強さを誇るチームはなかった。来年はどこもある程度は立て直してくることが予想されるので広島の日本一の可能性はますます低くなる。今年が最後のチャンスだったように思う。

 

 そうは言っても、来年何かの間違いで日本一を掴み取る可能性はゼロではなく、2%、いや3%ぐらいはあるはずだ(ちなみに今年は50~60%ぐらいはあったと思う)。来年丸がいないのはこマルが、丸の弱点をマル裸にして、打たれようものなら頭をマルめるぐらいの覚悟を持ち、若手の台頭でマルく収まるようチーム一丸となって戦い、丸が目をマルくして固マルような感極マル優勝を目指す。そしてどうかいい加減日本一を達成してくださいませ(切実)。

 

 

 

~今だから言えること~
次に日本シリーズを戦えるのはいつになるんでしょうかね…。そもそもCSすら出れないしね…。

 

 

 

 

 

↓2019

 

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