※M-1グランプリ2020

M-1グランプリ2020】(約5800字)
※過去記事

脱稿 2021年2月7日
公開 2022年10月9日

 

 

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※過去記事は、そのときの私の感想を残しておくために、あえて原文のまま(誤植があれば直しますが)掲載します。そのため、今となっては不自然な表現や記述がある可能性もございます。例えば「最近の~」や「数年前の~」といった表現が出てきた場合、それは現在ではなく、記事を書いた時点での“最近”や“数年前”を指しています。
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大変長らくお待たせしました。
これほど遅くなった理由を説明するには、バカなうちの大学の話をしなければなるまい。

前期は本来なら試験をやるはずだった日のあたりにレポート提出が固まっていた。そのため、数日間に怒濤の課題ラッシュが押し寄せており、満員電車並みの詰め込み具合となっていた。
それを反省したのか、後期はレポートを最終授業前に提出させる講義が増えた。本来の試験日に出す講義と分散させて学生の負担を減らそうという考えだと思われる。
しかし、蓋を開けてみるとほとんどの講義が早めの提出となり、結局課題の満員電車状態は変わらなかった。それどころか、学生にとっては、課題の提出期限が単に10日ほど早まっただけで完全に逆効果だった。
ね?バカでしょ?

要するに、M-1記事を書き上げる前にレポート地獄へと突入してしまった、ということである。

 

 

 

 


〈総括〉
いやー昔のM-1が戻ってきたねー。
ここ数年は総じてレベルが高かったが、本来のレベルはこんなものである。何年か経ったらM-1の谷間の大会と言われそう。
例えるなら、
オコエ世代!  ひのえうま!  '15ヤクルト!※
といったところか。


※'15ヤクルト…混戦のセリーグを制した2015年のヤクルトのこと。セリーグの全チームがずっこけてなんかわかんないけど気付いたら優勝してた。私はこの優勝を「1位が空いていたからとりあえず入ってみた」と呼んでいる。

 

 

今年の傾向は、声張りすぎのツッコミ・動きすぎのネタ・掛け合い不足の3つである。ただ大声で言うだけだったり舞台上を動き回ったりと、変化球コンビが目立って、会話主体の漫才も少なかった。その結果、これは漫才なのか論争が起こり、やや混沌とした大会となった。

 

 

 

 


〈言いたいことたち〉

・登場前の煽りVの曲何で変えた?


・待機部屋からステージ裏への移動中ずっと映すのはやめてあげてほしい。


・審査員の位置毎年コロコロ変わるのはなぜ。同じメンバーなのに。(去年も言った)


・all kyojin!  89点! takeshi tomizawa!  89点! nobuyuki hanawa!  85点!……
このテンポの悪さどうにかして。前の 89! 90! 88! 92! ぐらいのに戻して。(去年も言った)


・あと何度も言うけど笑神籤はいらない。

 

 

 

 


〈敗者復活について〉
詳しく書くのは面倒なので点数は書かずランク分けに留めている。かなり主観が入っているので参考までに。


A(良い。決勝進出レベル)
学天即


B(悪くはない。敗者復活上位レベル)
からし蓮根・ゆにばーす


C(普通。敗者復活中位レベル)
コウテイ・カベポスター・
インディアンス・ぺこぱ


D(良くはない。敗者復活下位レベル)
金属バット・タイムキーパー・滝音
キュウ・ダイタク・ロングコートダディ


E(悪い。準々決勝レベル)

 

F(ダメ。出直してこいレベル)
ニッポンの社長


Z(論外。話にならないレベル)
ランジャタイ

 

 

 

では本編スタートです。

 

 

 

 


インディアンス「昔悪かった」 88
敗者復活と同じネタ(去年の和牛に引き続き2年連続2回目)。昨年よりは良かったが、何度も見たネタなのでこれで勝負してほしくなかったというのが正直なところ。インディアンスの問題点はボケの打率が低いことと、ツッコミが弱くバリエーションに乏しいこと。わちゃわちゃしていてやかましい漫才のスタイルを変えろとは言わないが、もう少し二人の間の会話があってもいいのではないか。昨年も言ったが、劣化版アンタッチャブル状態を改善しない限りは上位進出は難しいだろう。

 

東京ホテイソン「謎解き」 89
ネタ選びに失敗したパターン。謎解きというのは人によって馴染み具合が大きく違うものなので、漫才の大会の勝負ネタの題材とするには少々荷が重い。初の決勝なので、もっとシンプルなテーマの方が良かった。そして、とにかくやりとりが長く、見ている側がボケを忘れてしまう。頭をそんなに使わせなくても理解できるような内容にすべきだった。つまり、考え過ぎだし考えさせ過ぎたのである。ただ、全部「た」なので「た」を抜くと何も言えずに無言になるというラストは良い意味で裏切られた。ここ数年の東京ホテイソンは、ワードではなく音の響きで笑いを取るようになった。この変化が良いかどうかは人によるが、なんだか手抜き感がする。昔のい~やなになにのなになに~~の方が絶対に良い。ちなみに、この二人はSNSで知り合ってコンビを結成している。い~や婚活サイトの手法!!

 

ニューヨーク「爆笑エピソード」 91
エピソードの中に細かい犯罪をぶっ込んでいくという非常に攻めたネタ。去年の酷い歌とは全然違い、確かな実力を感じさせるものだった。ブラックなテーマを明るく仕立てるニューヨークの技術はかなりのものがある。喋ってこそ持ち味が発揮されるのだから、去年みたいな変な歌ネタは二度とやらないでほしい。「人を傷つけない笑い」がもてはやされるというクソみたいな世の中で、我流を突き進むスタイルには好感が持てる。

 

見取り図「マネージャー」 93
珍しくコントだったが、見取り図らしく結局は喧嘩する展開に。今年で3年連続の決勝進出となったが、どんどんネタの質が上がっており、見取り図では過去一番の出来。1つ言うとしたら、コント漫才だとしても動きすぎかな、という程度。漫才の技術も良くなってきた印象があるが、見取り図にこれ以上の上積みを求めるとなると、実力的に厳しい気もする。

 

おいでやすこが「カラオケで盛り上がらない」 92
R-1決勝進出の経験があるピン芸人2人の即席コンビ。やはり小田の爆発力に限る。声量と足音が合わさって勢いが凄い。この曲は何だと思ったら「何やねん、その曲ぅぅ!」、知らねえなと思ったら「知らんなぁぁぁぁ!!!」など、小細工なしで全力でシンプルにごり押しするのが、寝て起きたら漫才しか残っていなかったピン芸人らしくて良い。

 

マヂカルラブリー「高級フレンチ」 91
座ってせり上がってくるというM-1史上最速のボケをかまし、どうしても笑わせたい人がいる男ですという自己紹介、ネタの最初のボケも良い。しかし、ここがピークだった。後半になるにつれてしぼんでいったのが惜しかった。これまではあまり気が付かなかったのだが、意外とツッコミが上手い。タイミングや速度が絶妙で、声質ほどしつこく感じない。野田の上沼への「何人にもあんなことしてるんだ」は今大会一番の切れ味。

 

オズワルド「改名」 92
改名という独特なテーマ。口に何か入れられる・まのセキュリティといった着眼点も抜群で、ひてぃにきの口がずっと開いていたことでひっくり返すオチは素晴らしい。もっと静かに見たかったという松本の意見があったが、ずっと静かだと盛り上がりに欠ける。最初から大声を出すべきという巨人の意見については、大声コンビが続いた後のためそれはそれでくどい印象を受ける。オズワルドの強みはネタの中での強弱や静と動の使い分けなので、自分たちのスタイルのままやってほしい。

 

アキナ「女の子を楽屋に呼ぶ」 84
本当にスベり大魔神が現れたな。言っちゃ悪いが酷すぎた。設定が特殊すぎて入ってこないし、ついて行けない。途中からちょっと何やってるか分からない状態で、確実に観客や視聴者を置いてけぼりにしていた。かなり声を張ってステージを大きく使っていたが、そもそも笑いの量と釣り合っていないので、虚しく映るだけだった。これに関しては、順番が悪かったとかでは断じてない。

 

錦鯉「パチンコ台」 87
にちようチャップリンの準レギュラーとなるなど、今年になって露出が増えてきた甲斐あってか決勝進出。錦鯉のネタは何回か見たことがあるのだが、もう少し面白いものがあった気がする。錦鯉だけに、いまいちハネなかった。レーズンパンは見た目で損してるかもしれないが、今回はネタ選びで損している。昔は「こーんにーちーはー」の後に「こんばんはだろ」というやり取りがあったのだが、最近は「うるせえな」で済ますようになってこのくだりをやらなくなった。あれ好きだったんだけど。もし来年も決勝進出なら長谷川は50歳である。なんだかその事実だけで笑えてくる。

 

ウエストランドマッチングアプリ」 89
自他共に認める悪口漫才師。一時期レッドカーペットで死ぬほど見たが、そのときとあまり変わってないような印象を受けた。ウエストランドのネタは前半で客を彼らの偏見(統計)の世界にどれだけ引き込めるかにかかっている。今回は自分たちの空気にするまでがちょっと長く、後半良くなってきたところで終わってしまった。もう少し序盤に刺さる言葉があれば後半のウケ方も違っていただろう。

 

 

 

 


【審査員採点】
今年もやります。私の採点も横に添えている。

      巨  富  塙  志  礼  松  上       私
インディアンス   89  89  85  89  90  90  93 625 88
東京ホテイソン 86  91  85  89  88  86  92 617 89
ニューヨーク    88  93  93  91  91  92  94 642 91
見取り図   91  92  93  93  93  91  95 648 93
おいこが   92  93  93  96  95  95  94 658 92
マヂラブ   88  94  94  90  96  93  94 649 91
オズワルド  88  91  95  93  95  88  92 642 92
アキナ    89  88  87  90  91  85  92 622 84
錦鯉     87  92  95  95  92  89  93 643 87
ウエストランド   88  91  85  86  90  90  92 622 89

最高点    92  94  95  96  96  95  95      93
最低点    86  88  85  86  88  85  92      84


巨人は全体的に点数が低いが、ちゃんとした漫才をやってほしかった、という気持ちがあるからなのかもしれない。それよりも問題なのは上沼の点数の幅が3点と狭すぎること。敗因は初手のインディアンスに93をつけてしまったことだろう。
今回に限ったことではないが、トップバッターの点数を基準点にする審査員ほどそこを下回らない傾向がある。後半に出てきた微妙なコンビに、多少ウケたトップバッターより低い点数がついたのを見たことがない。トップバッターと比べて面白いかどうかで後のグループの点数を決めるのはよくある手法だが、その比較がちゃんとした比較なのかもう一度よく考えていただきたい。

 

 

 

 


おいでやすこが・マヂカルラブリー・見取り図の3組が勝ち抜いたが、実はこの3組の最終決戦になったとき嫌な予感がした。というのも、この3組が優勝にふさわしいネタを2本持っているとは思えず、優勝する画が全く浮かばなかったのである。そしてこの予想は的中する。

 

 

 

 


見取り図「地元」 87
コントから漫才に変えてきたが、正統派漫才の方が微妙ってどういうことよ。何だろう、なんか分かんないけど観た直後でも全然印象に残らなかった。盛山が手を出した後にリリーが変なことをして、「俺って〇〇ですか?/〇〇なんかな?」というお決まりのやり取りはもうお腹いっぱいです。

 

マヂカルラブリー「吊革に掴まりたくない」 88
ずっと同じパターンなので後半飽きる。床に寝転がっているだけで2人の掛け合いが無いため、どうしても“一人コントと解説者”という構図になってしまう。一つの設定を貫き通すのがマヂカルラブリーのスタイルであることは十分理解しているが、展開がないこのネタを優勝ネタとしたくはない。

 

おいでやすこが「ハッピーバースデー」 88
同じく後半飽きるパターン。1ネタを平坦な一曲だけでやり切るのはきつい。口ぶりから考えるに恐らく2本目は用意していなかったのだろう。お互い話が通じないネタのため、アクリル板が無いのにも関わらず二人の間に仕切りが見えてしまい、ピンネタ+ピンネタのようにすら思える。

 

 

 

 


誰でもいいな……。
全て90点を下回ったことからもわかるように、2本目ははっきり言ってどれも微妙。優勝する画が浮かばないと言ったがその通りで、やはり私の目に狂いはなかった。該当者なし(そんなの無いけど)を選びたい気分。

 

【最終審査結果】
巨人富澤塙志らく礼二松本上沼
 見 マ 見 マ マ お お
 取 ヂ 取 ヂ ヂ い い
 り カ り カ カ で で
 図 ル 図 ル ル や や
   ラ   ラ ラ す す
   ブ   ブ ブ こ こ
   リ   リ リ が が
   丨   丨 丨


2-2-3で割れたのは初めて。良い意味ではなく、悪い意味での接戦だった。

 

 

 

 


〈まとめ〉
昨年の記事でM-1は新たな局面に入ると書いたが、このような結果となった。
M-1常連組の中から、銀シャリスーパーマラドーナジャルジャルかまいたち・和牛が既に抜けており、それと同等の突き上げが下から無いと必然的にレベルは低下するので、今後数年はこんな感じになると思われる。
マヂカルラブリーの優勝は変化球中の変化球コンビの優勝で、ある意味衝撃的である。漫才の大会で優勝した以上は漫才は漫才なのだが、イロモノ枠であることには変わりない。こういう系は何組かが会場を湧かすから良いのであって、優勝させて主流としてはならないのだ。和牛やかまいたちが今年出ていたら優勝していたんだろうな、とすら思ってしまい、素直に喜べない自分もいる(KOCでどぶろっくが優勝したときもこんな感じだった)。
M-1視聴後、正統派漫才が見たくなったので本戦の録画を見た後すぐに敗者復活の学天即のネタを見ました。

 

最後にもう一度言うが、記事の完成が昨年より3週間ほど遅れてしまい申し訳なかった。面目ない。ごめんちゃい。すんまへん。ごめんねごめんね~。


                おしまい。

 

 

 

 


~今だから言えること~
この翌年錦鯉が優勝するとはね…。びっくり。
最終決戦の3組はこの年のM-1以降よく見るようになりましたね。

 

 

 

 

 

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