※キングオブコント2021

キングオブコント2021】(約6100字)
※過去記事

脱稿 2021年10月31日
公開 2022年10月13日

 

 

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※過去記事は、そのときの私の感想を残しておくために、あえて原文のまま(誤植があれば直しますが)掲載します。そのため、今となっては不自然な表現や記述がある可能性もございます。例えば「最近の~」や「数年前の~」といった表現が出てきた場合、それは現在ではなく、記事を書いた時点での“最近”や“数年前”を指しています。
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皆様お久しぶりでございます。
7か月ぶりの記事です。7か月ぶりということはだいたい210日ぶりで210日ぶりということは5040時間ぶりで5040時間ぶりということは302400分ぶりで302400分ぶりということは18144000秒ぶりです。
……いや、別に何が言いたいとかは無いですよ。まあ一つだけ言えることがあるとすれば、着地点を考えずに文章を書き始めるとこういうことが起こる、ということですね。何じゃそりゃ。

 

 

 

 


それでは、本編に入る。
今回のキングオブコントでは、大きくルールが変わった点がある。それがユニット出場の解禁だ。このルール改定で即席で組んだコンビやトリオの参加が可能となり、大きな話題を呼んだ。個人的にはユニットの参戦にはどちらかといえば反対なので、次回からは無くしてもいいのでは。即席ユニットを劇場やENGEIグランドスラム(5月のやつまだ観てない)・ベストワン(観てない)・ネタフェス(観てない)などのネタ見せ番組でやるのは構わないが、賞レースに持ち込んで優勝を目指すというのは違う気がしてならない。


結局ユニットの中で決勝に進出した者はいなかったため、私が危惧した事態は起こらずに済んだ。審査で1組ぐらいユニットを入れてもおかしくないようなものだが、そうしなかった。これは逆に真剣で忖度なしの審査であることの証明になっているともいえるので、そこに関しては問題はない。ただ、大々的にルール変更を打ち出し、芸人側もそれに奮起してユニットのネタを一応は仕上げてきたうえでのこの結果(決勝進出ユニット0)なので、ルール変更自体に果たして意味はあるのかという疑問が湧き上がる。もし来年もこのルールで行うのであれば、今後1年間はある程度ユニットとして活動する(つまり即席は×)ことを条件とすべきだろう。

 

 

 

今回は採点が難しい。今大会はレベルが高いとか低いとかではなく優劣をつけるのが難しかった。そして、明らかにわざと盛り上げていることが分かるぐらい、客が暖かかった(いつぞやのR-1のように、「きゃ~」や「え~」などのクソコールがなかっただけ大いにマシではあるが)。後述するが、点数がインフレした一因にもなっただろう。

 

 

 

じゃあやる。

 

 

 

 


蛙亭「人工生命体」 89
蛙亭のネタは中野メインならイタイ奴の話で、岩倉メインなら暗い奴の話、というイメージだったが、これはそのどちらでもなく、かなりハートフルな感じ。登場のインパクトでの笑いと、世界観がすぐに分かるような構成は悪くない。ヌルヌル感などの細かい部分も笑いにしており、最後には中野が強いというだけで面白くなる。ただこのネタをコントとして考えたときにどうかというところ。良いドラマを1本観たという感覚で、「笑わせる」というよりは「良い作品を見せる」という感じに近い。普通のネタ番組ならこれでも充分なのだが、笑わせたもん勝ちの賞レースでやるネタとしては1ランク落ちる。

 

ジェラードンカップル」 90
ツッコミがそこまで会話に参加せずに一歩引いた視点でいることによって、騒がしすぎるネタにならないようにうまく調整され、いい塩梅になっている。最後のビンタで私の点数を90点台に持っていった。ジェラードンらしさは全開のネタだが、もっと笑えて完成度も高いものがあるのに勿体ない気もした。まあこんなカップルが実際にいたら痛いし痒いし吐き気を催すでしょうね。

 

男性ブランコボトルメール」 88
今大会で唯一知らなかったコンビ。どちらかといえば出オチのような展開で、終盤で再び盛り上がりを見せたものの、思ったよりは伸びなかった印象。あと白いワンピースの方が千原ジュニアにしか見えない。逆に「清楚な見た目の女性が関西弁」という違和感を消すためにあえて容姿を千原ジュニアっぽいものにしているのだとしたら、それはそれでよく考えられたネタではある。知らんけど。言うとる場合か。

 

うるとらブギーズ「迷子センター」 87
ちょっと前半早口すぎるかな。ていびし、モーガン・フリーマン、HeyYo!!、トヨタの靴ぐらいのワードを聞き取れる程度を想定しているのだろうが、ちょっと何言ってるか分からない感が出るとどうしてもセリフが雑音ぽくなってしまう。そしてこれはネタ時間の問題かもしれないが、あたふたする時間も長い。あたふたが長い&聞き取れないのコンボでかなり損をしている。後半の、笑いをこらえる館内放送で笑わせるというのは新しく、これは評価できるポイント。

 

ニッポンの社長「バッティングセンター」 90
デッドボールの演技が抜群で当たり方のバリエーションも豊富。確実に事前に何発かぶつけられてきていると思う。ただ気になったのはボールに当たる時間がちょっと長いこと。当たる部位を変えようが当たる打席を変えようが、どうしてもやっていることは一緒になってしまうため、間延びしていた感は否めない。最後のおっさんの打ち方が森友哉に似てる気がするんだけど分かる人~✋

 

そいつどいつ「パック」 86
ビジュアルの面白さはあるのだが、小道具に頼りすぎた感がある。振り向いたり床を拭いたり包丁を研いだりと動きの種類は多かったものの、怖さの種類は1つしかなかった。展開も一点張りで、結局は「怖い」で片付けられてしまう内容だったのも残念。

 

ニューヨーク「結婚式の打ち合わせ」 85
「OKです」がくどい。キラーフレーズにしたいんだろうが、いくらなんでも多すぎる。すべてのセリフの仕上げのワードが全部一緒なため単調なネタになっている。さらに、ニューヨークは結婚式のネタを去年も披露している。「披露宴での余興」と「事前の打ち合わせ」という違いはあるのだが、2年連続同じテーマはどうなのよ。

 

ザ・マミィ「おじさん」 92
おじさんが良心を取り戻していく過程は非常に面白い。人の優しさで笑わせるネタの中ではかなり上位に入るだろう。一つだけ残念だったのは、最後のミュージカル。余りにも唐突で、歌った後に何かあるのかと思ったらそのまま終わってしまったので、展開的には非常に勿体ない。

 

空気階段「火事」 96
これは面白い。私の中でキングオブコント3年ぶりの96点が出ました。まず目に飛び込んでくるのがもぐらの腹(そこかよ)。すごいよねあれ。太っていくと普通は前に腹が出ていくのにそれを通り越して下に伸びてるもんね。腹がお辞儀しているもん。そのようなビジュアルでも笑えるし、展開もスピード感があるし、職業の意外性?のような笑いもあるし、セリフの爆発力もあるため、今回の1本目の中では格が違う。私の中では97も出そうかと思ったレベル。今までほとんど出してないので97の感覚が自分でもよく分からなくなっている。それにより点数は96となったが、それぐらい、ほとんど97に近い96です。

 

マヂカルラブリーこっくりさん」 84
吊革で味を占めたな。M-1で寝っ転がっているだけで笑いを取れたことで甘えや慢心が生まれていなかったか。そういうつもりがなくてもそう見えてしまう。10円の演技は良く、こっくりの意思も感じられるが、それも台無しになる。そして細かいところだが、照明が明るすぎる。夜中のトンネルがメガトンパンチマンカフェより明るいのはどうにかならなかったのかと思う。

 

 

 

以下2本目のや~つ。

 

 

男性ブランコ「レジ袋をケチった男」 87
今ならではのテーマで、着眼点は良い。しかし、品物を落としてすべて拾うまでの時間が長い。品物を落とした後、相手が拾い、それを受け取るときにまた落とす、またそれを拾うという一連の流れがあるのだが、最初はコントの設定の説明も兼ねて時間をたっぷり使うのは構わない。だが、その後ははすでに流れが分かっているぶん、落として拾う時間や回数が同じようだとテンポが悪くなる。例えば、2回目以降は落としたらすぐ拾い、拾い直すのは3回まで、などのルールを徹底すればより良いネタになる。

 

ザ・マミィ「ドラマ」 90
序盤の重苦しい雰囲気から一転し、途中からは完全にドラマのように振り切る、という落差は見事だが、BGMのところの時間の使い方に関しては改善の余地あり。ネタ時間に制限があるため、あそこの長台詞はもう少しコンパクトにすべき。それによって空いた部分にやり取りを足して笑いどころを作れればなお良い。オチが読めてしまったのも惜しい点である。

 

空気階段「コンセプトカフェ」 93
登場のビジュアルで優勝を決めたといってもいいだろう。メガトンパンチマンは宇宙で一番強い存在の割には小さかった。メガトン感はなかった。50cmぐらいしかなかった。蹴飛ばせば倒せそうだった。ちなみに、今回の全13ネタを私の採点順に並べると、1位と2位を占めるのが空気階段となる。私の中で完全優勝とも呼べる形となったが、これはキングオブコントでは初の出来事。

 

 

 

 


コラムその① 点数のインフレ

今回は、審査員5人体制になってから初めて審査員が変更された。松本は据え置きで、バナナマンとさまぁ~ずの枠に山内・秋山・小峠・飯塚が入った。しかし、その弊害ともいえることが起こった。それが点数のインフレである。今回の点数は非常に高く、空気階段の歴代最高点をはじめ最終決戦に残った3組は全員が470点台。大会によっては1位通過も狙える点数だ。さらに、今回の最低点は453点とこれまた高く、単純に平均を取っても全員が90点以上をつけた計算になる。最初の蛙亭461点の時点で「あ、今回インフレするな」と思ったし、実際その通りになった。90点未満だったのはニッポンの社長での松本89、そいつどいつでの秋山飯塚89、マヂカルラブリーでの小峠飯塚89のみ。山内に至っては全組が90点以上で、88未満をつけた者(つまり88未満がついたネタ)は一人もいなかった。このインフレ現象について考えてみる。


もちろん最大の原因は無駄に大きいリアクションをとった客である。審査員が点数をつけるときに多少は客の反応を参考にせざるをえないため、客のウケを考慮して点数を高くした可能性は否定できない。それ以外の原因が新審査員4名の存在である。バナナマンやさまぁ~ずに比べて、山内・秋山・小峠・飯塚は未だにネタを作り続けており、劇場の出番も豊富な“現役”の芸人だといえる。つまり、出場芸人に近い立場なのである。今もコントを作り続け、若手芸人のネタにも精通し、コントへの思いが人一倍強い彼らが審査員という立場になった場合、出場芸人への採点が甘くなっても不思議ではないだろう。よって、今回の点数インフレ現象は、必要以上に暖かい客と、出場芸人に近すぎる立場ゆえに採点が甘くなった審査員とが合わさった結果なのではないか。
(念のため言っておくと、私は甘めの採点が悪いことだと言いたいわけではない。途中で基準を変えなければ全編甘めでも全編辛めでも構わない。)

 

 

 

コラムその② トップを低く抑えることについて

これは私との採点方法の違いによるものだろう。
「私は絶対評価をしているが、審査員は相対評価をしている」これが原因である。
私は過去の自分の採点をすべて記録(そしてだいたい記憶)していて、その膨大なデータベースを基に「だいたいこのネタと同じぐらい」「これとこれの間」などと判断したうえで点数をつけている。しかし松本はともかく、それ以外の4人は経験がほとんどないため、脳内に培われたデータベースがまだ少ないのだと思われる。そのような状況下では、トップにとりあえずで基準となる点数をつけて、基準点との差から相対的に判断していくしかないのだ。これは経験でしか解消できない問題なので、何度もやるうちに多少は良くなるのではないか。逆に、何年も審査員をやっているのに未だに「トップなので抑えました」などと言う人がいれば、その人はいつまで経ってもデータが蓄積されない人、言い換えると審査が下手な人だということである。

 

 

 

コラムその③ 今回のネタの総括

今大会のネタの傾向として挙げられるのが、
・オチよりツカミを重視
・ハッピーエンド感、ほのぼの感
の2点である。

オチよりツカミを重視する傾向は去年もあった。去年のキングオブコント記事で、私は、オチが弱く、最初の笑いを超えてこなかったと書いている。しかし裏を返せば、去年も今年もツカミで成功したネタは多かったということになる。昨今は公式チャンネルを開設する芸人が増えたり、様々な配信サイトが乱立したりと、芸人のネタを観れる・観られる機会が増えている。そこで注目を集めるためには、ツカミの部分で関心を得ないとそもそもネタを見てもらえないという事態が起こる。ツカミで引き込まないとオチまで辿り着いてくれないのである。そんな事情もあってか、登場にインパクトを与える、最初のボケで確実に笑いをとる、などといった、オチよりツカミを重視する方向にシフトしてきているのかもしれない。しばらくはそういうのがトレンドになるのかも。

 

そしてハッピーエンド感・ほのぼの感であるが、世間が明るいネタを求めている(ような気がする)ことと重なる。ザ・マミィ・空気階段のハッピーエンド感は言うまでもないし、蛙亭にはハートフルさ、ジェラードンにはほのぼの感があり、男性ブランコうるとらブギーズニッポンの社長は気分がすっきりするネタである。

 

他方で、どちらかといえばバッドエンドの結末を迎えたのが、そいつどいつ・ニューヨーク・マヂカルラブリーの3組。そいつどいつはモヤモヤを抱えたまま終わり、ニューヨークは結婚式の準備が何もできずに式場が崩壊し、マヂカルラブリーに至っては野田が死ぬ。実はこれらの3組が偶然にも大会での下位(8位9位10位)と重なるのである。やはり暗いネタより明るいネタ、バッドエンドよりハッピーエンドを好む傾向が一段と強いのか。と、ここまで書いて気が付いたのだが、私の採点でも下位を占めたのはこの3組だということが発覚した!

……鳥肌が立ったよ。怖い話を聞いた気分だよ。

 

 

 

 


はい、というわけで、今回はこんな感じで終わります。
次回は広島記事(11月末ごろ?)です。
その後にM-1記事(1月末ごろ?)を出します。

おしまい。

 

 

 

 


~今だから言えること~
1つ前のKOC記事で、「1本目で90点以上をつけた数も10組中4組と私が採点を始めた2015年以降で最少となった」と書いていたが、実は90点以上をつけたのは10組中4組というのはこの年も同じだということに気付いた。

 

 

 

 

 

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